競馬場放浪記

海外競馬場を訪問した記録を書き留めていきます

ガルフストリームパーク競馬場を行く (アメリカ/フロリダ州/マイアミ)

さて、今回のテーマはフロリダ州はマイアミに位置するガルフストリームパーク競馬場(Gulfstream Park)である。

(前置きなんていらねえよという方は3分の1くらいスクロールしてください。そのうち目次付けます)

 

4月某日、アメリカ在住の筆者は、なんとかして来る5月6日ケンタッキーダービーを観戦できないものかと航空券を調べていた。しかし、筆者の住む州からはチャーチルダウンズ競馬場のあるルイビルに直行便がなく、さらに前日の5月5日に外せない用事があったことから、ケンタッキーダービーは泣く泣く断念。

そのままフラフラと格安航空券を探していると、5月5日深夜マイアミ着-5月6日夜マイアミ発で$80弱のチケットを見つけ、マイアミ行きを即決。そんなこんなで深夜に空港につくと、そのまま持ってきたマットを敷いて適当な場所で雑魚寝したのであった。

朝起きると横に同業者が。

ちなみにマイアミにはいくつか空港があるのだが、最も大きくマイアミ中心部に近いのがマイアミ国際空港、今回私が利用したのがフォートローダーデール・ハリウッド国際空港である。フォートローダーデール空港から南に16kmほど行くと競馬場がある。空港から競馬場へは30分おきに出ている路線バスで40分ほどである。しかし、格安で航空券をとったことから、マイアミ滞在はたったの1日。ということで筆者は直接競馬場に向かうのではなく、午前中はビーチを堪能した後、午後から競馬場へと足を運んだ。

広い砂浜。このビーチは数キロにわたって続く。

 

これが競馬場の地図である。内馬場が池になっているのが特徴的だ。スタンドから馬場を見て左手、競馬場の北側には厩舎があることをなんとなく覚えておいてほしい。

 

さて、このガルフストリームパーク競馬場は、コースが3つある点でユニークだ。航空写真でもわかる通り、一番内側に一周1400mの芝コース、真ん中に1664m(公式発表1mile70yards)の全天候コース、そして外周に1800mのダートコースである。全天候コースとはなんぞやと思って調べてみたところ、Track surface - Wikipediaには、排水性に優れた人口素材を敷き詰めているため悪天候でもレースを開催することができますよということが書いてある。ダートよりも足にやさしいという結果もでているらしいが、どこまで信じていい情報なのかはわからない。まあたしかに水のたまった不良馬場のダートコースなんかは危なさそうだし、水はけのいいコースでレースを行う方が安全なのは間違いないだろう。

ここで開催されるレースといえば、今年ケンタッキーダービーで一番人気だったフォルテが制したフロリダダービーだ。そのほかにも、古馬のみが出走するペガサスワールドカップ(ダート/ターフ)が有名であり、この3つがガルフストリームパークで開催されるG1レースということになる。

開催日程についてはあまり詳しくリサーチをしていないためはっきりとした情報を書けないのが申し訳ないのだが、下にホームページを張っておくので、もし行きたい人がいたら開催日等は自ら確認してほしい。ホームページからracing calendarへ行くとカレンダーが表示され、そこでlive racingと書いてる日が競馬開催日である。さらに、そのlive racingのそばにあるrace detailsをクリックすると、Entriesに飛び出馬表を見ることができる。出馬表の上の方にあるOvernightというボタンをクリックすると、その日のレース全ての出馬表がPDFで表示されるようになっている。一応、年中開催しているようである。

gulfstreampark.com

 

どうしてもダラダラと前置きを書いてしまいがちなのだが、いよいよ本題に入ろう。

ビーチから競馬場へはこの写真のような道が続く。

さらに進むと、Gulfstreamとかかれた看板が。

入場する前に、厩舎の近くを通ったため近づいてみると馬運車が停車していた。

厩舎のゲートはこんな感じ。

厩舎から入場口まで向かう途中に、使われていなさそうなゲートを発見。府中にある競馬博物館で日本のゲートも見学することができるが、大きな違いはないように見える。

正面

背面

そして、これが2013年に建設され新たなシンボルとなったペガサス像である。ペガサスがドラゴンを踏みつけている。Wikiによるとペガサス&ドラゴンというなんとも安直な名前のようだ(Pegasus and Dragon - Wikipedia)。

このペガサス像は、高さ110フィート(約33.5m)で、アメリカ国内に限定すると、プエルトリコのなんらかの像と自由の女神についで3番目の高さを誇っているようだ。2017年には、この像にちなんでダートの国際競争であるペガサスワールドカップが、そして2019年にはターフが新設されている。さすがに英語版しかないだろうと思っていると、なんと日本語のwikipediaのページを発見。こうやって海外の情報を日本語でまとめてくれるのは非常にありがたい。

ja.wikipedia.org

ja.wikipedia.org

競馬場の周りにはちょっとしたショッピングモールがあり、買い物やボーリングをすることもできる。このショッピングモールはGulfstream Park Villageという名前で2010年に増設されたものだ。"ちょっとした"ショッピングモールというのがみそで、2010年開業の割には、お店は半分近く閉まっており、客足もみるからに少ないのが気になる。

入口正面。

こうしてみると雰囲気はいい感じ

すくし寂れた感じが伝わるだろうか


さあ、いよいよ(やっと?)本丸の競馬場である。お店を抜けていくと突然パドックが現れる。ここまでくるのになんのゲートもなく、いきなりである。この建物の両サイドから入場できるようになっており、ここから馬場に抜けるまでにもゲートは存在しない。一階が一般ゾーン、二階は予約席および関係者席である。パドックを囲うように座席がありその外が通路となっている。向かって左手に装鞍所があり、そこから直接パドックに入場できるようスロープがある。

ちなみに装鞍所は何らかの仕切りでくぎられているというわけでもなく、通路に直接つながっている。もちろん警備員が2名常駐しているため中に入ることはできないが、ぎりぎりまで近づいて写真を撮らせてもらうことができた。たしかフラッシュはやめろと言われたような気がする。

装鞍所

ここでレースの準備をした馬は先ほどのパドックへ向かう。パドックの時間になると警備員がチェーンを張り、一般客の通行をせき止め、馬が入場。

そのままパドックを数周してから、また装鞍所を通り抜けて馬場に入場するという流れだ。パドックは、日本と同じく左回り。客席からは垣根を一つはさんだのみで、馬に手が届きそうな距離間だ。この競馬場は総じて馬との距離が近く、馬の迫力が感じられる。また聞こえてくる調教師とジョッキーの会話は、どうやら7割くらいはスペイン語で、ジョッキーと調教助手っぽい人はみるからにラテン系だった。ちなみに観客席でもスペイン語が多く飛び交っており、マイアミっぽさを感じる。

気温が高いためお尻に氷をのせている馬も。

装鞍所を抜け馬場へと向かう。

パドックと馬場の間の通路には、バーがあり、また複数のモニターで各地の競馬中継を見ることができる。この日がケンタッキーダービーの日だったからかなのかはわからないが、DJが淡々と音楽を流していた。みなDJよりも馬券のことが気になってそれどころではないようで、DJの前に人だかりはなかった。競馬が実況されているタイミング以外はずっと音楽が流れており、暖かな陽気と相まって、非常に雰囲気がいい。

 

さあ、こちらが馬場である。目の前に見えるのがターフビジョンで、手前の垣根にある四角い箱がスピーカーである。

画面下には追跡システムによってレース展開をリアルタイムに把握することができる。すべてのレースをしっかり下調べするわけではないため、左下に先頭から5頭目までの馬の名前が表示されているのもありがたい。

こちらがスタンド。建物はそこまで大きくはない。一階は座席はなく基本的には立ち見。

二階に上がるとこのようなボックスシートが配置されている。正直なスタッフのおばちゃんいわくビュッフェつきで$75だが、そこまでの価値はないらしい。右手のガラス張りの部屋はおそらく関係者席だと思われる。

二階から馬場を望むと内馬場の池が見渡せる。こうしてみると、たしかに真ん中の全天候トラックと外側のダートトラックの色味が違うのがわかる。

ゴール板の目の前に観客席をえぐるような形でウィナーズサークルがあり、馬が返ってくると、そのまま馬場で顔についた泥を水に流し、すぐに記念撮影が行われる。

走り終わった馬たちはスタンドの左端に帰ってきて、馬場で馬具を外すとその場で泥を落とし、体を冷やすために水を浴びる。マイアミが暑いからなのか、自由だからなのかはわからないが、たしかに馬の体をすぐに冷やしてあげるのはいいことだと思う。そして一通り落ち着いたあと、地図で確認したように競馬場の北に位置する厩舎へとコースの端を通りながら帰っていく。

レースのために厩舎からやってくる馬。

パドックと馬場の間の室内ゾーン(2階席の下)にはアメリカ各地の競馬が同時中継されている。アケダクトにもあったパーテーションで区切られた机が大量に設置されているが、どうやら予約が必要らしい。奥の方には、各テーブルにモニターが設置されている。馬券はオンラインでも買えるようだ。

ちなみにパドックの周りの壁には活躍した名馬の盾が飾られている。日本でもおなじみの馬も多数見られた。

また、ガルフストリームパークは飲食店が非常に充実しており、見つけただけでも7つ以上は飲食店があった。アイスやグリル系、バーにハンバーガーとバラエティにも富んでおり、値段も特別競馬場だから高いということもなかった。また、競馬場の外のGulfstream Park Villageのほうにもいくつかレストランがあったため食事には困らないはずだ。

さらに自動券売機も多数設置されているうえに、有人販売所もいたるところにあるため、馬券を買い損ねるということもなさそうである。

wagerというのが発売所の目印

 

さて肝心の馬券はというと、珍しく大きく勝つことができ、なんと旅費も回収しきってしまうという満足のいく結果であった。

3レースの未勝利戦、パドックで圧倒的一番人気の馬があまりよく見えなかった一方、最下位人気の馬は明らかに仕上がっており、厩務員のここで勝ち切るぞという気概が見えていた。さらに、この馬、これまで一度しか走っていないうえに、前走は最後までしっかり走り切っていなかったようで底を見せていなかった。といった事情を踏まえて、この馬の単勝に$10かけたところ、最終的に約37倍のオッズがつき、$370ほどを手にすることとなった。

ところで、007カジノロワイヤルには、ポーカーに大勝利したジェームズボンドがディーラーにチップを渡すシーンがある。大金を手にして気持ちよくなってしまった筆者は、ジェームズボンドさながら受付のおばさんにチップを渡しかっこつけてしまったのだが、チップの額は数ドルというなんともお粗末な結果になってしまった。ちなみにジェームズボンドは数億円ほどを渡していた記憶がある。

さて、この後は一発を狙うために人気馬を絡めた3連単フォーメーションで勝負し続けるも馬券は当たらず。鼻差で決着し、おしくも的中ならずというシーンもあったのだが。ちなみに競馬場のYouTubeチャンネルで全レースのアーカイブが見れるため、帰宅後も余韻に浸ることができる。

youtu.be

ゴール寸前の様子

 

こちらが購入したプログラム。2ドルのものと5ドルのものがあり、5ドルだとDRFのレース指数が掲載されているということで5ドルものを購入した。DRFは、netkeiba的な競馬のまとめサイトである。

www.drf.com


馬券とプログラム

この日は、ダービーデーだったということもあり、どうやらいつもより人が多いらしく、着飾った人も多くみられた。写真で見てもわかるように意外と若い人と女性が多いうえに、半分ほどは白人だったように感じた。アケダクト競馬場で感じた鉄火場といった雰囲気というよりも、競馬という娯楽を楽しむような雰囲気だった。この辺は、常にノリノリの音楽がかかっていたり、南国の空気がそう感じさせているのかもしれない。

ともあれ、ランキングをつけるとすると、今まででいった競馬場の中では断トツの一位だ。機会があれば、ぜひともG1開催日に再び訪れたいと思う。大きく勝ったことを除いても、弾丸で競馬場のためだけにマイアミに訪れたかいがあったと感じさせる良い一日だった。

夕方のスタンドの様子